自作CMS・自作サーバーにて運用中
かぁくん本紀は当然ながら転載自由です。詳細はインフォメーションをご覧ください。
目次 > 2019年 > 3月 > 4日 >
カテゴリー: 漫画・イラスト / 小説
<<【イラスト】2019年 223系...

【小説】天照ス花火 - 1章

作成日時: 2019/3/4 (月) PM 10:41
最終更新: 2019/3/4 (月) PM 11:04

7101系氏とのタイアップ企画で、小説書いてみました。

天照ス花火 (アマテラスハナビ)

天照ス花火 (アマテラスハナビ) 1章

 俺は私立の中高一貫校を卒業し、中堅私立大学の文学部に進学した。大学では、高校で同じ部活に所属していた先輩に勧められて、昆虫サークルに入部した。昆虫サークルと言っても、珍しい昆虫を捕まえてきて飼育するといった本格的なものではなく、野外で写真を撮ったりするだけの半ば遊びのようなものだ。実際、先輩もサークル活動はずぼらで、最初のころはオオクワガタとコクワガタの見分けすらつかないような状態だった。
 去年までは部長だったその先輩も半月前に4回生になり、卒論に集中したいと言って退部、今年度からは俺が部長だ。

◆◇◆◇◆ ◆◇◆◇◆ ◆◇◆◇◆

 その日、俺はいつものように部室で他の部員数名と、来月の野外観察の行き先を話し合っていた。この昆虫サークルでは、毎月上旬に部員全員で郊外へ出かけ、そこで見つけた昆虫を観察するのが慣例となっている。まあ、部員全員というのは建前で、実際にはその半分の10人くらいしか参加しない。昔は部員数100人近い大きなサークルだったという聞いているが、今ではすっかり寂れてしまい、今年に至ってはとうとう新入生の入部者はゼロになってしまった。
 外では八重桜が道に大きく張り出した枝いっぱいに花を咲かせているというのに、この部室はいつもと変わらず陰気なものだ。部屋の奥の壁では十年以上も前の、顔も知らない先輩が残した蝶や甲虫の写真がクモの巣の向こう側で茶色く変色している。入り口のそばに並んだ無機質な灰色のロッカーや、部屋の隅に積み上がった標本箱も、以前は誰かが使っていたものなのかもしれないが、今は埃をかぶったままである。立て付けの悪くなった入り口の引き戸に貼り付けた手書きの「部員募集」の張り紙も、何年前のものかわからない。こんな部屋の真ん中で、これといって目立ったところのない男数人がぼそぼそと話しているのだから、これでは新入部員も現れるまい。
 今回も話し合いは雑ぱくに続き、行き先は大学から車で10分ほどの公園に決定した。壁の写真を撮った先輩の時代は毎回他府県に行っていたというような話も聞くが、最近は部員全員アルバイトやら他のサークルやらのついでにやっているような状態で、行き先は専ら近場になっている。今はもう見る影もないが、かつては男女多くの部員がここに集まり、やる気に満ちた声で意見が交わされていたのだろうか。
「すいません!」
そう、こんな風に。 ・・・ってあれ?

「あの、ここって昆虫サークルであってますか?」
見ると、入り口のところに小柄な少女が立っていた。
 向かいに座っていた部員があっけにとられたような顔で、うん、そうだけど、と答えると、少女はなんのためらいもなくこちらへやって来て、
「あの、私このサークルに入りたいんですけど、新入部員ってまだ募集してますか?」
と、言った。
数秒の沈黙が流れたあと、向かいの部員が、
「おい、部長、」
と、言ってきたので、俺は、
「あ、まだ受け付けてるんで、大丈夫・・・」
そう言いながら、少女の顔を見た。
知っている顔だった。

 少女は、鏡ノ宮 照日(かがみのみや てるひ)。いわゆる顔見知りというやつで、会話したことこそなかったが、俺が高校3年のとき、夏の大会に向けてテニスの練習をしていたとき、隣の女子テニス部のコートで練習していたのが記憶にある。変わった名前だったのでよく覚えていた。明るい茶色のショートヘアも印象的だった。そういえば、毎年初詣に行く近所の神社で、よく巫女のバイトしてたっけ。

 俺は、
「とりあえず、入部届持ってくるからちょっと待って」
と言って部屋の奥の鉄製キャビネットから入部届を1枚引っ張り出した。そして、それを鏡ノ宮に差し出しながら、
「あのさ、もし違ったら悪いんだけど、君ってもしかして高校・・・
そう言いかけたとき、
「高校、テニス部でしたよね。覚えてます!」
鏡ノ宮が嬉しそうな顔でそう言った。
俺はテニス部では目立っていた方ではなかった。俺は大会では大した成績は残せなかった一方で、1つ下の学年には県大会で1位になった奴もいた。直接話したこともなく、しかも、テニス部で隣り合ったコートで練習していたのも半年足らずなのに、どうして俺を覚えていたのだろうか?
そんなことを考えていると、鏡ノ宮がいきなり
「先輩、どうしてわたしが先輩のこと知ってるか不思議ですか?わたしは先輩のことなんでも知ってますよ?」
と、言ってきた。

それが、俺と照日が初めて会話した一日だった。


<<【イラスト】2019年 223系...


この記事のタグ:
天照ス花火

漫画・イラストの新しい記事

【イラスト】キャミソールのマテバちゃん 【イラスト】今日の描き捨て 2019-06-11 【今日の描き捨て】2019-06-10 【イラスト】今日の描き捨て 2019-06-01

この記事へのコメント

1.

とにかくめっちゃ好き。
これはハマる。
投稿者:南海7101系 投稿日時:2019/3/4 (月) PM 10:51 <<返信

2.

>>1
よかった〜
2章は明日公開で・・・
投稿者:かーくん(管理者) 投稿日時:2019/3/4 (月) PM 11:03 <<返信

3.

https://syosetu.com 

ここに出してもいいくらい…👏
投稿者:まっちゃん 投稿日時:2019/3/4 (月) PM 11:52 <<返信

4.

続編・・・
投稿者:南海7101系 投稿日時:2019/3/7 (木) PM 10:41 <<返信

5.

>>4
ちょっと待ってくれ...

小説は気分がノッてるときしか書けんのや...

各動作に必要なMP比較
小説>お絵描き>>プログラミング>乗車録執筆
投稿者:かーくん(管理者) 投稿日時:2019/3/8 (金) AM 12:12 <<返信

ここにコメントする

×
読み込み中...

ハンドルネーム

(省略時は匿名になります)
トリップを使用する場合は半角「#」の後にキー文字列を続けてください。

本文

アップロードする画像ファイル

コメントに画像を添付することができます。(最大4枚)
(各ファイル12MBまで)


【!】コメント投稿についてのご注意
他のサイトやブログ、他人のTwitter等からの転載の際は引用元のURLを記載してください。
ご協力お願いします。